にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活 (1970) / History of Postwar Japan as Told by a Bar Hostess

舞台は「豚と軍艦」の横須賀、内容的には「にっぽん昆虫記」の実録版、手法としては「人間蒸発」のドキュメンタリー・タッチの、女の肉体を通して描いた戦後二十五年史。脚本・監督は「神々の深き欲望」の今村昌平。

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にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活 (1970) / History of Postwar Japan as Told by a Bar Hostessのあらすじ

横須賀の丘の上に一軒の立派な家がある。この家の主人公は、六十を越えた元気な婆さんである。今日はアメリカへ遊びに行っていた長女がおみやげを買いこんで帰ってきた。彼女は、堂々と肥ったマダムである。お人好の次女も嬉しそうに話を聞いている。アメリカには三女が米軍のパイロットと結婚して住んでいて、今度子供が生まれたのを機会に長女が代表格で、行ってきたというわけである。悦子の娘たち、即ち婆さんの孫たちも、バスト一メートルをこえようというグラマーぞろい。女ばかり三代のバイタリティにあふれた一家である。彼女たちは戦後まもなく田舎をとび出して、女であるという条件を武器に奮戦してきた。原爆、ヤミ市、戦争孤児、パンパン狩り、彼女たちの特需景気もたらした朝鮮戦争。ほんとうにあの頃は忙しかった。黒いジョーも死んだし、白いジョーも死んだ。そして沢山生まれた混血の孤児たち。エリザベス・サンダースホームの昔のフィルムを無心に眺める混血の孫娘。彼女たちがひとつの生きた戦後史ならば、ニュースも単なる過去の再現でなく、生きた姿として登場してくる。この一家に二十五年間の記録フィルムを見せ、それに触発されてあけすけに語られる感想や一家の生々しい記録。そこに戦後日本の歩みと、この一家の歩みがときに交錯し、ときに離れ、二つの流れとなって生きはじめる。そしてカメラはさらにこの一家の現実の生活にも鋭く斬り込んでくる。父権も夫権もないこの女三代。増殖するたくましい女たち。今もその生き方を変えようとしない女たち、彼女たちの戦後には日付はなかった。

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